雨の日の憂鬱 2




「う゛〜ひなしぃー…ティッシュ取ってくれぇ。」
只今、僕は風邪を引いている。
「んあ?もう空っぽ?こりゃ大変だねー。」
気に障るような言い方をした挙句、最後らへんは棒読みだった。
「君は病人に対しての気遣いはないのかい?」
ほんと、そう思う。
いくら、僕がちょいとヒドイことを言ったからといって病人には優しくするべきではないのか。 罰なら後で受けてやるから……せめて、風邪だけは…風邪だけは治させてくれ。
きつい…鼻詰まって、喉痛くて、熱高いし…。
これ以上何かしたら拷問だ。陽菜士…助けてくれ…。早く…ティッシュを…鼻が垂れる…マジで……危機が………







セーフ!!
ありがとっ!陽菜士!マジ感謝!
鼻を思いっきりかんで、ゴミ箱にシュート。バッチリ…入らなかった。
ゴミ箱の周りにはティッシュの山が出来ている。もちろん僕が投げたからだけど……たぶん、 いや確実に、ゴミ箱の中にひとつもティッシュは入っていないだろう。
仕方ないことだ。


ん?


珍しいこともあるもんだ。陽菜士が無言。むしろ、こわい。
恐る恐る陽菜士を見る…。




「気遣い?………何を言ってるんだい?年中無休の病気にかかってるヤツが…。」


ニコッとした陽菜士。


「ははは…。」
ブチッときた僕。
彼は意外とマゾみたいだ(そういう僕はサドかな?)。
もちろん殴ってやった。



涙目の陽菜士…ほんと…馬鹿っ!!








「はぁ。」
軽いため息をついて窓を通して空を見上げる。
雨は降ってないが、黒い雲が空を覆ってる。今年の梅雨は……楽しく過ごせたと思う。たぶん。 半分以上保健室にいたけど、まあ…それだけ…で、済んだし、まあ、良かったんじゃないかと思う。
今年は、普通の人と同じように過ごせた。そんな気がした。
1つ、僕の夢…叶った…みたい…。これは、現実なのか?嘘じゃないのか?
だって、だって在りえない…………ずっとずっと前から神様にお願いしていて、ずっとずっと…叶わなかった、のに…。 神様は僕のお願いを貯蓄していたのだろうか?実は…聞いていないふりをしていたんじゃないのか?神様は、本当はとっても意地悪で――――
はは…これじゃあ、まるで子どもみたいだな。子どもだけど…。
反抗期のちびっ子みたいだな、って思ったんだ。


そうだな、神様は機会を与えただけで…きっと僕の力で成し遂げたんだ。そうだ、そう思おう。その方が良い…その方が面白い―――――。





そうだ!!


梅雨が明けたら陽菜士とどっかに遊びに行こう。その頃には夏だし……海まで行くかぁ。
きっと久しぶりに散歩に連れて行ってもらえる犬のよう…いやいや、それより嬉しそうな顔をするんだろうな…。と、想像してみたら笑えてきた。


予鈴が鳴る。


僕は思考の海から抜け出して、陽菜士に授業が始まるよ、と忠告した。


「むを!!もう授業始まんの!?戻んないと、やべ。んじゃにぃー!」
慌ただしく彼は保健室を出て行く。
開いている窓から心地よい風が吹き込んできた。梅雨明けももう少しだろう。 ふと、目をやると、ベッドの隣の椅子…陽菜士が座っていた椅子に小さな花瓶が置いてあった。
少し皺くちゃな薄桃色の花がささっている。よく校庭に咲いている花だ。
あいつ…妙な心遣いしやがって……。


風が花を微かに揺らす。







カラカラ…



誰か入ってきた…?





「陽菜士……?」


ドアの前に立っていたのは陽菜士じゃなかった。




僕は彼女を知らない。
清楚な感じの女の子。長い黒髪が風に揺れる。








時が止まった









ような気がした。
何だか変な気持ちがする……もやもやしてて掴みどころがない。 けど、何故だか彼女を知っているような、懐かしいような、何なのだろう……。
一度、逢っているような…そんな気がする。




開いたドアから風が吹き込んできた。
風は彼女の香りを運んできた。
この香りを僕は知っている。







夏の香りだ。














次に、つづく。


いやはや…一応、雨の日の憂鬱はこれにて終了。だがしかし、連作…?というのだろうか…? …この話はまだ続きます!はい!がんばります!!
あ〜でも、考えれば考えるほど話…短いよな……短すぎるよな…(;`□´)_
物足りない…だろうな…読んでくださった方には申し訳ない…申し訳ないぐらいでは足りないぐらい申し訳ない。
それでも、読んでいただけるなら…すみません。もう黙ります。

この話はもう…2年以上に書いたのをリメイク?したものです。
もっとばーじょんあっぷできるようにがんばります。
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