星屑の街






星も見えないような明るい夜空に浮かぶ白銀の三日月。
止むことの無い喧騒。
輝くネオン。
街灯のぼやけた灯り。
暗闇に潜む影。
この街は腐ってる。
と、誰かが言っていたのを覚えている。
違う街から引っ越してきて、引っ越していったヤツだった。
もう名前も顔も覚えていない。
僕はこの街で生まれ育った。此処の小さな世界しか知らない。
僕が見てきた全てを、僕自身全てを、否定されているようで僕はその彼のことがあまり好きではなかったことだけは覚えている。
彼は今どこに居るのだろう。きっと、此処より綺麗と言われるような所に居るに違いない。





夜の街。大通りの騒々しさ、猫の爛々とした瞳。
夜の散歩にビルの上を伝い歩く。夜風がひんやりとして生暖かい人混みが恋しくなる。
月は光を投げかけず、こちらからの光に見入っている。
星屑の街。
僕はこの街のことをそう呼ぶ。
そう……。
このビルの上から見下ろせば、街の灯りが小さな星空に見える。
まるで天がひっくり返ったかのようだった。
ひとつひとつの光は本物の星ではないけれど、そこに誰かがいて生活していることを教えてくる。 僕の目には映らないけれど、きっと…本物の星空のように人々の命が燃え輝いているのだろう。


星屑の街。
星が己の命を燃やし輝くように人が己の命を燃やし生きる。
この街では天に本物の星々を見ることはできないけれど、空には白銀の月がいつでも見守ってくれて、 そして…小さな星のこども……星屑達が此処で輝いている。


嗚呼。
綺麗だ。



星屑の街、今日は珍しく天に流星群が訪れた。流星群は、輝き、瞬く間に消え去って行った。
夜風が通り抜ける。
三日月はこちらを見て微笑んでいた。
僕は大きく手を振り微笑み返す。





後、数時間で夜明けだ。










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