星輝く空



23





あの日、あの日から…僕はセイをまともに見ることができない。
頭の片隅であの光景が何度も何度も繰り返される。そんなの見たくないし、はやく忘れ去ってしまいたい。だけど…。
セイを見る度に思い出す。


僕は目を伏せて今日もご飯を食べている。




「…えっと……すばる…?」


「…なに?」


もちろん机に視線を固定したまま返事をする。
困ったようなセイの声なんて関係ない。
僕は頭の片隅にある映像を無理やりどこかに押し込めて、努めて震えないように手を動かす。
「すぷーん」がお皿に当たってかちゃかちゃ音を立てるのは仕方ないことだろう。


「あのさぁ……」




「だからなに?」


顔を上げ、少しいらついているように答えてしまう。
ただ余裕が無くてそんな答え方をしてしまってるだけなのだけれども。セイには悪いな、と思う…たぶん、でも、セイが………ね…。


「えーっと……」




セイは困ったように眉を下げてこちらを見ている。
開いた口は何をしゃべろうとしていたか忘れたかのようにぱくぱくしてた。


もし。


もし、僕があの光景さえ見ていなければ、こんな…セイにこんな困った顔をさせるようなことはしなかっただろう。
僕の胸の中に浮かぶ言葉は「裏切り」。
セイは悪くない。
僕が悪い。
というか、僕が勝手にそう思っているだけだ。
けど、そんな思いが僕を支配していく。
真っ黒な感情。
僕を蝕み、セイを傷つける。




「すばる……俺、なんか…悪いことした?」


「………。」


「…なにか、すばるを傷つけるようなことした…?」


「……してない。」


「ほんとに?」


「……。」


「ねぇ…すばる……?ほんとは、何かしちゃったんだよね?すばるが嫌なこと…気づかなくって…ごめんね…。」


「なんで謝ってるの?」


「え、えっとだから……」


セイの視線は泳いでいる。困らせてるのは僕だ。


「すばるの嫌なこと…しちゃったから……。」


「それ、なんなのかわかって言ってるの?」


「いや、あの…わからないけど…謝るぐらいはしないと…」


「ふーん。わかんないのに謝るんだ…。」


「え?……いや、あのその……。」


しどろもどろのセイを置いて僕は寝室に戻る。
片付けはセイがやってくれるだろう。


「すばる!」


セイの声が背中に当たって落ちる。
もちろん無視した。
口を開けば非難の言葉が出てきそうだった。


こわかった。
セイを傷つけるのが。
今でさえもあんな…寂しそうな顔をするのに…きっと僕が今セイと話せばそれだけじゃ済まない。 セイを非難して、罵倒して、殴っちゃうんだろうな、と思う。
はは、僕……いつの間にこんなに言葉を覚えたんだろう…。


もう、勉強…しなくてもいいのかな…?




もう、セイの隣にはいられないのかな?




「おやすみ……。」


微かに呟いてベッドにもぐり込む。
暗い寝室に隣の部屋からの灯りが漏れる。


セイの片付ける音を聴きながら浅い眠りに落ちた。













セイ、ごめんね。


















気まずい雰囲気です(- -)


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