星輝く空
30
その翌日の話。
控えめにドアがノックされる。
その音に驚いて僕は飛び上がった。
心臓がばくばく鳴っている。
コン、コン
静寂がこの部屋を支配している。
少しでも動けばドアの向こうの人に気づかれてしまいそうな気がして一歩も動くことができない。幸い、窓からここが見えることはない。
コンコン!コンコンコン!
先ほどよりも強くノックされる。
早く諦めて帰ってほしい。
「すみませーん。誰か居ませんかー。」
女の人の声だ。
コンコン。
まだ諦めないのかノックし続けている。
はやく帰って…。
「誰か居ませんかぁー。」
しーん。
「居ないのかな…?どうしよ…折角パン持って来たのに…。」
そう言っているのが聞こえた。
聞こえたからといって僕がおまたせしましたと言って出ることはできない。
また、あの時と同じことを繰り返すなんてことはしたくない。
僕は異端。なのかも…しれない……。
だからこそ、お世話になっているセイに迷惑をかけることはできない。
声を出さないように両手で口を塞いでその場にしゃがみ込む。
「セイさーん。おすそ分け持って来たんですけど…居ないんですかぁ?」
早く帰って……
コンコン
「セイさん、は居ないか……。」
へ?
ドンドンッ!!
「居るんでしょ、開けて。ねぇ…居るのはわかってるのよ。あなたこの前窓から覗いてたでしょ…?」
な、なんで
「また痛い目に遭いたくなかったら早くココを開けなさい。…ココに金髪の悪魔がいることはわかっているのよ?」
え?
見られてた…?
「早く開けなさいよ。セイが居なくなってもいいの?」
セイが……
鍵を開け扉を開ける。
「何か…御用ですか…?」
青ざめた顔を隙間から覗かせると勝ち誇った笑みを浮かべた女の人と目が合う。
背筋を冷たいものが走り抜ける。
「ふふ、別にとって食おうと思っている訳では無いのよ。そんなに怯えなくても……まあ、仕方ないか…痛い目にあったもんね…?」
「―――なぜ」
「なぜ?何故ですって?それはもちろん、私が貴方を殺してとお願いしたからに決まっているでしょう?他に何があるっていうの…?」
暗い瞳が怖くて膝が笑う。
なんでドアを開けてしまったんだろう……。
なんでこんなことになっているんだろう……。
セイ、セイ、たすけて、セイ。
僕は…僕はどうなっちゃうの…?
「そうやって怯えたふりしてセイを誑かしたのかしら。」
横に首を振る。
「それよりも…私は貴方に話があって来たのよ。少し、お話いいかしら?」
そう言って僕の返事も聞かずに強引に家へ入る。
「外で話して不利なのは貴方の方なのよ?」
おろおろしていた僕を見てそう言って、艶やかに笑う。
背筋が凍るような笑みに僕はただ縮こまる。
置いてあった椅子に座り空いている方の椅子を指差す。
つまり、座れということだろう。
おとなしく腰掛ける。
「さて、はっきり言うわ。」
目が怖い。
「貴方、目障りなのよ。消えて。」