星輝く空






僕が人間になってから早くも6週間が過ぎた。



しばらく黒の神様と会っていない。
きっと忙しいのだろう。



月が日に日に欠けていく。
それを眺めて僕は懐かしさに浸る。
いつの間にか夜の日課になっていた。









「すーばーるー!!」



セイの大きな声が外から聞こえる。



「なぁにぃー?」



僕も大きな声で答える。



「ちょっと来てー!」



何かあるのかな?
とりあえず…行ってみよう、か。
セイの声がする方へ僕は向かうことにした。






セイは玄関のところで待っていた。



「よし、今日は森に行くぞ!毎日家の中で勉強ばかりしていたら疲れるからな。今日は、体験授業にする!」



セイは楽しそうに言った。
僕もつられて笑う。



なんだかわくわくする。
だって……。
僕は星だったから…。
まだまだ知らないことがたくさんあるんだ。
僕は今からそのうちの1つを知ることができるなんて……。
楽しみだなあ。
森は話にしか聞いたことが無いからどんなところか気になってしょうがなかったんだ。
いったいどんなところなんだろう?
僕はいったん戻ってセイが作ってくれた昼ごはんをかばんに押し込んだ。
セイは嬉しそうな僕を優しく見つめていた。







森に到着。
結構歩いた………。
つかれ、た。



「すばる……。だいじょうぶ?」
心配そうにセイが覗き込んでくる。



「うん。ちょっと…疲れただけだから。」



僕は弱々しい笑みを浮かべて答える。
いや、本当は…たぶん、大丈夫じゃない。
脚がガクガクしてるんだもん。
ううぅ…しっかりしろ僕!



「すばる…こんな時は無理せずに休まなくっちゃ。」
セイはいそいそと草の上に布をひいて僕を座らせる。



そんなセイの優しさが嬉しい。



「…ねぇ。セイ……いっしょ…すわ、ろ?」



セイと座りたいなぁ。
なんだかそう思った。



「いいよ。」



隣に座ったセイを見る。



「せぃ……」



「ん?どうしたの?」



僕を見る瞳がきれい…。
セイとなら――――。



「すばる?」



少し心配そうなセイの顔。



「うわああぁ!」



セ、セイの顔がち、近い!

「―――っ!!」



なな、な、なんでぇ〜。



「すば…る?」






「な、ななな!…なんでも、ない。」



ど、どーしよ。僕の顔…赤い気がする。
心臓がどきどきしてる。
そんな僕の顔をセイがぺたぺた触るもんだからさらに真っ赤になった。



「すばる。顔…赤いけど…大丈夫?」



「も!もぢろんです!!」
うん。
かんだ…。



セイ…もう見ないでよぉー。



俯いても恥ずかしかった。





「すばる……かわいい…。」



セイ…もしかして、わざと……。



ううぅ。ひどいよぉ。



「さて!…あー、もう少し休憩したらまた歩くけど…すばる、大丈夫?」
まだヘタレている僕を見てセイは苦笑いを浮かべていた。
僕だって好きでこんなに体力が無い訳じゃないんだよ。
うん!僕だってセイみたいに格好良くなりたいんだもん。
だけど…お勉強もしなくちゃならないし…もともと体力無いから走ったりするのも辛いし……僕には全くどうしたらいいのかわかんないよぉ。
僕には…無理…なのかな…。
ガックリとうなだれている僕にセイは優しく微笑む。
あったかい気持ちになるその笑顔。
僕はとても大好き。
先程までうなだれていたことも忘れて微笑みを返す。



僕はセイが――――。





「さあて、すばるが元気になったところで…行きますか!」
人差し指が指すのは目の前の森。
濃い緑の風景に僕が感動したのは言うまでもない。









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