晴れの日の雨



1.



現在、夏休み。夏休み前に陽菜士と約束していた「海へGO!計画」は実行することができなくなった。折角の晴れ…残念すぎる。
一学期の終業式に陽菜士の………ひ、な、し、の、ふ、ちゅーいによって右腕と左脚を折ってしまうという (はぁ〜、思い返すだけでテンションが下がる。)
まあ、あーなってこーなった訳だ。
しかも、右腕とはね……僕は左利きじゃないから苦労したのは言うまでもない。 何から何まで誰かの手を借りなきゃならないなんて非常に不愉快だ。
ほんと、何回陽菜士に文句を言っても言い足りないな。
そんなことをクーラーの効く快適な室内で考える。外はすでに灼熱地獄だ。いくら真昼の太陽だからと言ってこれはあんまりだ。 夏のうだるような暑さは食欲とやる気を物凄く減退させている。
リハビリをしなくちゃいけないが…まあ、昼寝をすることにした。




□■




昼の熱さが和らぐ夕方。
少し長めの昼寝から覚めた僕はリハビリついでに散歩に出ることにした。


これは、僕が馬鹿だった。
こんなに大切なことを忘れるだなんて……。
これは憶えておくべきだった。
夏と言えば…。




夕立。





□■



丘の上。
夕闇が迫ってきた公園のベンチに僕は座り込んでいた。ぐしょぐしょに濡れた上に、あっちこっち傷だらけ。擦り傷に切り傷。 切り傷と咬み傷。あんな短い時間でこんなに痛い思いをするとは……。
記録更新したかもしれない…そう思って溜息を吐く。
いつの間にか、僕の前に誰かが立っていた。
「あなた、さっきいた……。」
見上げて声の主を見た。
閉じた赤い傘が目に付く。
彼女は困惑した表情で訊いてきた。
「大丈夫ですか?」
茶色い髪に茶色い瞳、どこかで見たことあるような………。


「………あ!き、君は……保健室で見かけた…。あ、えっと、大丈夫です。お気になさらず。」


僕は…そう言った。
関わられたら面倒だ。
とりあえず、どっかに行ってほしい。そう思って彼女を見ると…。


………震えていた。


彼女は顔を真っ赤にして、ぶるぶるという擬音語以上にぶるぶる震えていた。
だけど…。
その顔は…とてもとても嬉しそうでした。
嫌な予感―――




彼女は急に嬉々として喋り始めた。
「大丈夫じゃないでしょ!っていうか気にしないとか無理でしょ!だって……だって、ずぶ濡れだと思って見てたら、車に轢かれそうになって。 と、思ったら、本当に轢かれて。軽く2、3メートル飛ばされて、ゴミに突っ込んで、そこに居た野良犬に追掛けまわされて…。 アメリカ人でもそこまで大変な目に遭う人はいないよ!絶対!!」


「全部見てたんだ…。」


1つわかったことがある。
この人はアメリカ人に何かとてつもない勘違いをしている。っていうか何!?
僕を見る彼女の瞳は無駄にキラキラしているし、興奮した様子で僕の手を握ってぶんぶん振ってるし、なんなんだよ!? ほとんど初対面と言っていいほどの人に対する対応じゃないだろ!!
マジやめてくれ……。
僕の小さな願いを神様は聞いているだろうか。




それから、えっと…。
僕は彼女が傷という傷に絆創膏を貼ろうとしているのをなんとか食い止め(まあ、それなりにたくさん貼られてしまったけど)、 綺麗な夕焼けの空の下無事に(?)家へと帰った。
帰ってきてまず思ったのは…本当にあれ以上絆創膏を貼られなくて良かった、ということだ。
玄関にある鏡に映る僕は傷が無いところが無いというほど傷だらけ。あのまま貼られていたら…きっと絆創膏のお化けにしか見えなかっただろう。 おまけに、彼女は絆創膏を札束みたいに持っていた。……まだ、札束を持ち歩いている人の方がマシだったかもしれない。 と、悔やんでも仕方ない。


過ぎたるは猶及ばざるがごとし!


ん〜なんだか意味が違うような…そうでないような…そんな気がするけど……ま、いいか。 (因みに僕は…「過ぎた事はもうどうしようもできないから気にすんるな!」という意味だと思っている。)
今日はもう疲れた、しばらくの間散歩はやめにしよう。雨に降られたらたまったもんじゃない。それに、二度と彼女に会いたくない…感じがする。 あぁー、明日は晴れるといいな。少し夏の晴れの効果に期待してみよう。
夜空は満天の星空だ。
夜の風も夏の匂いがした。









やっと…
やっと…コチラを更新できたぁ!!!
これも随分前の加筆修正版。全然修正できてないけど…まあ、そこは置いといて。
さて、晴れの日の雨、スタートですよっ!
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