月の寝る頃 |
1. 登場人物紹介はありません;暴力表現、血、精神的に病んでいます。 苦手な方、影響を受けやすい方は回れ右でお願いします。閲覧後の保証はいたしておりませんのでご了承を!! 俺は人でも無くヒトでも無く生きて無く死んで無くそこに無くどこにも無く ただ、 願いのために…… あの日から ずっと 家族を殺した犯人を殺すまで…………… ‡ 焦げた匂い。 鼻をつくその刺激臭に俺は顔をしかめた。 パチパチと火のはぜる音に、耳障りな声がする。いや…目の前にその光景がひろがっていた。 「 。」 俺はそれ見ずに通り過ぎようと、足を踏み出す。 橋の下、きれいとは言い難い川が流れるその横で……彼らは猫を、…おそらく猫だっただろう死体に火を点けてはしゃぎまわっている。 異臭が酷い。 川の風が土手の上に居る俺のところまでいやな臭いをはこんでくる。 漆黒の髪をなびかせ、日も暮れかかったこの世界になにも感じることができずに…深く息を吸った。 大方の予想は当たるだろう……これは、面倒になりそうだ。 案の定、俺は橋の下にいる連中にからまれてしまった。 さいあくだ。 そう思って、口元が緩む。 なかなかおもしろいじゃないか。 「ねぇねぇ、そこのおにーさん。なに見てんの?」 ご苦労なことに、連中の一人が土手の上にいる俺のところまで来た。 「…………。」 もちろん、俺は何も言わない。…こいつらに言うことなんて何ひとつ無い。 「ちっ!…なんだよぉ、オレにビビったのかぁ?ぎゃははは!!マジかよ。うっわぁーマジだせえ! …なぁ〜、おにーさん。オレ達とあ、そ、び、ま、しょ!」 男は汚く笑って俺を見据える。どうやら余裕の表情らしい。 俺は男に殴られ、引きずられ、いつの間にか…橋の下で取り囲まれていた。 人数は、5人。 俺の漆黒の瞳には何も映らない。 「あはは。ちょっとイタイけど、ガマンしててねおにーさん。……せいぜい楽しませてくれよ!」 そう言って、彼らは下品に笑った。 円の中心に座り込んだ状態の俺を舐めるような視線がきもちわるい。 仕方ない…。 「こんなこと、やめてもらえませんか?」 立ち上がり、服の汚れを叩き落としながら俺は問う。 澄んだ真っ黒な声で。 「はぁ?いまさら何言ってんのぉ?…そんなのムリに決まってるデショ!」 太い金属パイプを振り下ろしながら答えられた。 まぁ…。 俺には関係ないや。 ごぎゅっ カランカラン あーあ。 鉄パイプを振り下ろした男の異形な右手を見ながら思った。 「…!!!!?!」 続いた絶叫に顔をしかめる俺。 俺の右手に収まった鉄パイプを握り直し、首を傾げる。 あ。 「――――。」 口から零れた音は何の感情も籠っていなかった。 空っぽの冷たい響き。 俺の手は、目の前の男に向かって鉄パイプを振り下ろした。 ‡ 救急車の音を背後に聞きながら歩みを進める。 「……。」 あれから。 男は、絶命した。 どうやら…打ち所が悪かったらしい。と言っても、鉄パイプで殴りつけたのは俺なのだが……。まあ、あれだ……うん、わからない。 ガリガリと頭を掻いて考えてみたが、何ひとつわからなかった。 ニンギョウに感情など… いらない。の、かも、いや…どんなにがんばったところで理解できないものなのかもしれない。 俺には――――必要じゃない、な。 僅かに染まった指先のアカに俺は安心感をおぼえた。 あと、4人。 ‡ 夢を見た。 あの日の夢だ―――――――。 今日は部活が長引いてしまった。先輩が俺たち1年生の態度とやらに文句をつけてきたからだ。 来るのが遅い、生意気だ、先輩をなめている、などなど…まったくの濡れ衣で、ただの憂さ晴らしとしかとれない注意をうけたのだ。 なにもかも、ぜーんぶ1年生のせい。だってさ。ふざけんなよ……俺たちはちっとも悪くないってのに…でも、やっぱ、へこむわぁ。 もう午後9時ときた。 空は真っ黒、俺の心は曇り。 今日は妹の合格祝いだってのに。早く帰ると約束したのになぁ…あいつ、頑張って勉強して高校合格したんだもんな…ほんとエライよ。 帰ったらたくさんお祝いしてやらないとな……。 にやけた顔で俺は帰宅を急ぐ。さっきまで塞ぎ込んでいたやつとは思えないほど足取りが軽い。 呑気に鼻歌を歌いながら俺は―――――。 「たっだいまぁー!!」 自宅の玄関をくぐった。 ??? さぷらいず? 真っ暗な家の中、立ち尽くす。 とりあえず。 家に上がって、電気をつけた。 「――――――っ!?!!!」 な ん、で ど して なん で… お、れ の め、の、まえ おれの… かぞく あ か い の ? 「――!!」 誰かに捕えられて、 目の前の光景が 信じられなくて 俺は おれは、 コワレテシマッタンダ。 |