月の寝る頃





 5.



登場人物紹介はありません;暴力表現、血、精神的に病んでいます。
苦手な方、影響を受けやすい方は回れ右でお願いします。閲覧後の保証はいたしておりませんのでご了承を!!








ねえ、おかあさん。お月さま…まだねむくないのかな?
ねえ、おかあさん。お月さまはいつねるのかな?
ねえ、おかあさん。こたえてよ………。
ねえ……つぎ夜きたらおしえてくれるって約束したのに…。
ねえ、おかあさん。ねてないでおきてよ。
ねえ、ねえ、ねえ―――――――




おかあさんのうそつき



暗闇は嫌いじゃない。
全て覆い隠してくれるから。俺があることを否定しないから。

人間は嫌い。
俺から全てを奪い去ったから。そして……。






なによりも、俺自身が嫌い。


反吐が出そうだ。


家に変えれば咽返るような死臭が漂っていた。
窓を開けると近所迷惑になるだろうか?そんなことを考えながらソファー兼ベッドに座っておにぎりの包みを開ける。
ぱりぱりの海苔の食感を保つために工夫されたビニールが今は俺の手元でおにぎりから離れまいと海苔とくっついている。 今、眉間に皺が寄っただろうか…?
綺麗に剥がすことを諦めて無理に引っ張れば海苔は無残にも破れた。
ビニールの間に残った海苔が恨めしそうにこちらを見ている気がした。
今度こそ眉間に皺を寄せて俺はおにぎりを見る。

ただのおにぎり。

何度か噛り付いてやれば全て腹の中に納まった。
うまかった…のか、わからなかった。味なんてしない。するけどしない。もう、殆ど判らない。
とりあえず、喉が渇いたから買ってきた水を口にする。
潤いは俺の心には無いだろう。例えどんなに水を飲んだところで俺の心は潤ったりしない。
そう、思った。
今日は、なんだか考えてばかり。いつもだけど…。でも、今日はなんだか違う。
潤い。俺の潤いだった家族……。いつまで固執しているのかと、昔の知り合いが尋ねてきたことがあったが、もう、それも昔。
今じゃあ誰も声を掛けない、掛けてこない。
俺が選んだ道は孤独。家族の為に歩く、孤独の道。俺の自己満足であっても構わない。 この道の先で家族と会えるのならば俺はどんな不名誉だって引き受けてやる。どんな困難も乗り越えてやる。 ああ、会いたいんだ。例え自己陶酔でも…俺は俺であるために。
いつか会えると信じていれば会えるって―――――。
誰が言った……?
憶えてない。けど、そいつを殺したことだけは憶えている。


「あいたいよ………。」


掠れた声で呟いてみる。
聞いているのは犬の死体だけ。
虚空を映した瞳に俺は見蕩れていた。

















next    close